スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

シングルアゲイン/竹内まりや

 1年ぶりだった。
 正確には1年3ヶ月だ。
 深い理由はない。
 俺が2人の女の子の、片方を選んだだけだ。
 深く悩んだ覚えもない。
 俺は単に、見栄えのいい方に夢中になり、もてあまして別れた。
 よくある話だった。
 「何してた?」
 以前はよく、3、4人でたむろしてた喫茶店で、俺は初めてのデートのように緊張していた。
 「コンサートに行ったり、映画を見たり、まあ普通よ・・・・」
 涼子は、以前と同じように明るく言った。

YaYas.jpeg
 電話が来たのはおとといの夜だった。
 「聞いたわ、美紀と別れたんだって?」
 涼子はいつも単刀直入だった。
 「ああ、まあ・・・・・・いろいろあってね」
 「だから言ったじゃない。あなたには無理だって・・・・・」
 「それを言うなよ」
 彼女は笑った。
 いつもそうだった。
 3人でいると、俺と涼子だけが会話をし、美紀はいつも笑っていた。
 「ところでさ・・・・」
 涼子はそれ以上はなにも聞かなかった。
 レコードをダウンしてくれるというので、明後日逢う約束をして電話を切った。

 「これ、約束のヤツね」
 涼子は、カセットテープの箱を取り出し、テーブルに置いた。
 「少し余ったから、別の曲も入れておいたわ」
 何気なく言って、微笑んだ。
 自分のものじゃない女は綺麗に見える。
 薄紫の、無地のワンピースがよく似合っていた。
 いつの間に、ピアスなんか付けたんだろう・・・・・
 「何を返せばいい?」
 俺はそんな自分にあわてて、言った。
 「別に何も期待してないわよ。電話でもちょうだい」
 投げ出すように言って、涼子は笑った。

 テープはエラ・フィッツジェラルドのライブだった。
 探してもなかなか手に入らなかった。
 ヴォッカを飲み、ライナーを読みながら、じっくり聴いた。
 涼子は、俺がライナー好きなのを知っていた。
 しっかりとレコードのライナーノーツをコピーしていた。
 拍手音が消えると、その余韻を楽しもうと目をつぶった。
 そのとき、突然イントロが流れ、俺は目を開けた。

 これが彼女の言う「別の曲」だった。
 含み笑いの意味もわかった。
 そして、彼女が女だったということも・・・・・

 胸がドキドキして眠れず、俺はその晩したたかに酔った。
関連記事

この記事のトラックバックURL

http://amber0502.blog9.fc2.com/tb.php/23-5ed7fb57

コメント

コメントする

管理者にだけ表示を許可する

Template Designed by DW99

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。