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フリフリ’65/SOUTHERN ALL STARS

 「今日は駄目よ」
 いきなり言われて、俺は『またか』と思った。
 いつもそうなのだ、もう寝た回数は3回や4回ではない。
 回数が問題でないことはわかっているが、少なくとも基準を示して欲しいと俺は思っていた。

20050506161932.jpeg
 仁美は俺の左胸に頭をのせ、なぜか一本だけ生えた、みっともない胸毛をもてあそんでいた。
 そして深く息を吸うと、俺を見上げた。
 「キミは、女を気まぐれな猫だと思っているな?」
 彼女は俺より2つ年上だった。
 俺を「キミ」と呼ぶ。
 「この前なんでいきなり断られたか、今日はまっすぐホテルに来たのか、俺には全然わからない」
 俺は正直に言った。
 「女という生き物はね、視覚は弱いんだよ。だから触覚や、嗅覚を信用する・・・・・・例えばね、自分が大好きなアイドルや俳優に誘われても、実際に会ってみて、声や、匂いや、握手した時の手の感触やなんかが、どっかひとつでも気に入らないところがあれば100人中99人は断るものよ」
 「でも男は違う」
 俺は言った。
 彼女の言うことがよくわかったからだ。
 男はそんな状況になったら100年中100人が、変なところは目をつぶってもヤろうとするだろう。
 「そう・・・・・ところでキミは、何種類コロンを使ってる?」
 「3種類かな、ラルフ・ローレンと、アラミス900と、4711・・・・・」
 「今日は?」
 「ラルフ・ローレン・・・・・・そうか!」
 俺は叫んだ。
 しかし仁美は、ぴしゃりと言った。
 「勘違いしないで!」
 「ラルフ・ローレンだからOKというわけではないのよ・・・・・・・」
 「え??」
 まだあるのか・・・・俺はいささかうんざりした。
 しかしここは肝心な話だ。
 そんな素振りは見せられない。
 「オーデコロンは、なんのためにつけると思う?」
 俺は答えなかった。
 どうせ、何を言ってもはずれに違いないからだ。
 彼女も正解など望んでいないはずだ。
 話のリズムのひとつだ。
 「人間には、体臭が必ずある。これはわかるわよね。コロンは、それを押さえたり消したりするためにあるんじゃないの」
 『やっぱりはずれだった・・・・』
 「コロンは、体臭と融合して、その人独自の香りを創造するためにあるのよ」
 『なるほど、いい言葉だ。バーナード・ショーの石像が言っていたな、いい言葉は半分戦争に勝っているようなもんだ・・・・・』
 「体調、季節、時間、場所、年齢・・・・その時々、場面場面で、使うべきコロンや、分量は違うの・・・・・」
 「体調や季節はいいとして、年齢ってのは?」
 私は聞いた。
 「年齢と共に、人間の体臭も変わるの。それくらい常識でしょ」
 冷たく彼女は言った。
 「アラミスがおじさんのコロンと言われるのは、おじさん独特の体臭に合うように作られているからなのよ」
 「そうか、俺はてっきり高いからだと思ってたよ」
 「それから、スプレー式も駄目ね。分量の微調整ができない・・・・」
 彼女は言った。

 仁美は、俺にいろんな事を教えてくれた。
 役に立っているかどうかはわからない。
 「朴念仁」が、「人並み」に変わっただけかも知れない。
 いわゆる恋のような、胸のときめきもなかった。
 いつの間にか逢わなくなって、それっきりだ。
 職業は、確か教師だったはず・・・・

 今日も朝、出勤前にCDを聞きながら、コロンを振る。
 あれから19年の歳月が過ぎた。
 俺は、アラミスが似合う歳になっているらしい。
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