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シャ・ラ・ラ/SOUTHERN ALL STARS

 降るような星を見ながら歩いていると、ユカリは俺のポケットにそっと手を差し込んできた。
 これから仲間の待つ居酒屋に行く途中だった。
 そこには二人の関係を根ほり葉ほり聞き出そうと、手ぐすねを引いてまっている連中がいる。
 「足は大丈夫?」
 俺は聞いた、彼女は初めてのスキーで、だいぶ疲れているはずだった。
 「大丈夫だよ。まだまだ夜はこれからよ!」
 元気にユカリは言った。

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 「スキーしたい!」
 とユカリが言ったのは、半年ほど前のことだった。
 付き合いは古かったが、友達以上の関係はなかった。
 「じゃあ、田舎に来る?」
 と俺は聞いた。
 かなりどきどきしながらの問いかけだった。
 それに対して彼女はすぐ、
 「行く!」
 と言いきった。
 なんのためらいもなく・・・・
 友達だから?
 好きだから?
 安全パイだから?
 俺の心には、疑問だけが渦巻いた。


 「楽しかったね」
 また、夜道を歩きながら、ユカリは言った。
 行くときよりも、幾分躰が寄っているのがわかった。
 今日の主催者は、小さなホテルのオーナーで、すでに一番の部屋を俺たちのために空けておいてくれていた。
 「いい部屋ねえ」
 部屋に入るなり、彼女はぐるりとひとまわりして言った。
 セミダブルベットが二つある大きな部屋だ。
 ユカリはベッドに腰掛けると、着替えを取り出し、シャワーを浴びに行った。
 すぐに彼女の歌声が聞こえてきた。
 どこでも、すぐ歌い出すのが彼女の癖だった。
 往復の車の中でも歌い通しだった。
 今歌っているのは、サザンの「シャ・ラ・ラ」という曲だ。


 挑戦的な詞は、俺への問いかけなのか・・・・
 こんなシチュエーションでもためらっている俺が、歯がゆいのか・・・・


 シャワーを終え、ユカリはバスタオルを身体に巻いたまま出てきた。
 「気持ちいいわよ、どうぞ」
 彼女は言った。
 俺はうなずいて、その場で裸になった。
 どういうつもりか説明のしようがない。
 拳を握りしめ、ボクシングの挑戦者のように彼女を見つめた。
 「はい、シャワーが先よ」
 ユカリは立ち上がって俺の手を取り、あやすようにそういった。
 しかし大人びた口調とは裏腹に、彼女の手は小さく震えていた。
 「わかった・・・」
 俺は言って、バスルームへ向かった。
 どうしていいのかわからないのだ。


 結局、その夜、彼女と結ばれることはなかった。
 初めてだったわけではない。
 酒のせいでもない。
 しかし、どうにもならなかった。
 彼女は、うちひしがれた俺の背中を、そっと撫でてくれた。


 ユカリはいつも優しかった。
 どんなときも・・・・ 
 彼女の優しさの深さが、俺を臆病にしていた。
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