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エロティカ・セヴン/SOUTHERN ALL STARS

 「ここは50キロだよ。きれいな奥さん乗せてるんだからさあ、もっと注意して運転しなきゃあ」
 俺を捕まえたお巡りは、下卑たことを言って笑った。
 苦笑いを返しながら反則切符を受け取り、俺は車に戻った。


miko

 2人が初めて出会ったのは、新婚旅行の飛行機の中だった。
 そこで何かがあったわけではない。
 4人で意気投合し、アテンダントにトランプをもらって退屈しのぎにババ抜きをしただけだ。
 帰国してから、何度か便りや電話をやりとりしているうちに、二人だけで話をする機会が増えた。
 そんなあるとき、俺が金沢へ出張する前日、たまたま電話があった。
 彼女もごく近くへ、親戚の法事で出かけるところだったと言った。
 夫は仕事なので、自分ひとりで行くという。
 当然俺は、食事に誘い、彼女は承知した。
 久し振りにあったとき、彼女は目を見張るほどきれいになっていた。
 なぜかはわからないが、時々こういう女がいるのだ。

 目的地へ向かって、ゆっくり車を出すと、彼女は空いている俺の左手を取って両手に挟み、自分の腿の上にのせた。
 「夫婦か・・・・・もう恋人同士には見られないトシなのかなあ」
 奈緒子は外の景色を眺めながら、吐息をついた。
 そっと顔色をうかがったが、それほど気分を害したわけではなさそうだった。
 
 紅葉で美しい有料道路の途中で写真を撮り、湖に向かった。
 湖畔のボート乗り場で、奈緒子は、
 「わああ・・・ひどおい」
 といって鰐皮のパンプスを見た。
 砂利道を歩いたせいで、ヒールの皮が剥がれてきたのだ。
 外反母趾がひどいために、「ヨシノヤ」に特注している靴である。
 「まだ3回しか履いてないのに・・・・」
 泣きそうになっていた。
それでも奈緒子はすぐ気を取り直し、通りがかりの観光客に、写真を頼み、一点の曇りもない笑顔を見せた。
 「わるいこと」をしているのに、何という笑顔だろう。

 奈緒子とは、それからも2、3度旅行した。
 旅行以外には逢わないようにしていた。
 彼女も決して、ふたりの未来のことを話に乗せることはなかった。

 今でも何枚かの写真が手元にある。
 写真には、笑顔の彼女しか写っていない。
 精一杯のよそ行きの笑顔だ。
 しかしもう、奈緒子に会いたくはなかった。
 奈緒子の笑顔を見るたび、俺は奈緒子が遠くにいるような気がしたのだ。
 まぶしいけれど、遠くにある・・・・
 「好きだ」と言っても、届かないような気がする笑顔だった。
 けれど、彼女の写真もプレゼントも、笑顔の記憶も、捨てることができない。
 会わないときの方が、そばにいる実感がある。

 最後に撮った、少しピンぼけの写真を見る。
 なぜか、垂らしてもいない「POISON」の香りが漂ってくる。
 奈緒子の好きな香水だった。
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